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OpenHistoricalMap

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
OpenHistoricalMap
(オープンヒストリカルマップ)
URL www.openhistoricalmap.org
言語
  • UI: 95 言語と地方語[1]
  • Map data: Local languages
タイプ 共同マッピング英語版
運営者 コミュニティ所有型、支援団体は OpenStreetMap U.S.[2]
製品 地理情報
営利性 No
登録 貢献者は必須、閲覧者には不要
開始 2013年 (12年前) (2013)[3]
現在の状態 Active
ライセンス
Various
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OpenHistoricalMap(オープンヒストリカルマップ、略語:OHM、表記違いはOpen Historical Map)はオンライン型の共同マッピング英語版・プロジェクト。歴史地図英語版の作成にOpenStreetMap の段取りと技術を採用する[4][5][6]。当プロジェクトでは過去のデータを歓迎し、特定の特徴が時間の流れと共に変化するさまを複数の地図に残していく[7][8]。その点、OpenStreetMapのほうは現行のデータ収集に限定し、陳腐化した情報は除去して表現する点が対照的である[7][8]。そのコミュニティの解釈では、OpenHistoricalMap は自分たちの地図から誤解を招く可能性のある古い名前を排除する手段とされる[9]


沿革

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インターネットのドメイン名「OpenHistoricalMap.org」を2009年に購入すると[10]、そのサイト上に OpenStreetMap というソフトウェアのフォークを作り始めたのが2013年で、当初のプロジェクト名「オープンヒストリーマップ」では2015年以降、 オープンアクセスの条件のもとで考古学、歴史学の情報活用にとりかかった[11]

この地図アプリでは投稿者同士で査読し合うシステムを設けており(ピア・レビュー[12]、同じようにボランティアが集めた地理情報lを扱っても、基盤システムを援用した先行の OpenHistoricalMap と異なる特徴があ[4]

ハードディスクに地名的な問題が発生した2016年、それでも投稿者からバックアップデータの提供を受け、ほとんどのデータを復元した[11]。プロジェクトの技術インフラは2017年以降、グリーンインフォ・ネットワーク(本拠地カリフォルニア州オークランド GreenInfo Network)ならびにデベロップメント・シード(本拠地ワシントン特別区 Development Seed)によって開発と管理が進む[13][14]。長年、ホストもとであったトポマンシー(Topomancy)が2018年に廃業、 OpenHistoricalMap のドメインの所有権はウィキウォーヘリテージ評議会(Wikiwar Heritage Council)に移管された[15]

利用者がシステムと双方向に地図データを時代間でフィルタできる拡張機能「時間スライダー英語版」を2020年に導入、プロジェクトの進展を大きく進めたとされる[4]。アメリカのOpenStreetMap U.S は OpenHistoricalMap を2021年5月に併合すると、社会的位置付けは非営利活動法人「OSM財団」のローカルの提携団体となった。

参加

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公式な歴史地図の例。作成者は旧アメリカ沿岸地理測地測量局(英語: United States Coast and Geodetic Survey)、座標を抽出(ジオリファレンス)したのは地域計画協会(Regional Plan Association)。目的は過去の湿地をマッピングしてOpenHistoricalMapに残すこと

OpenHistoricalMap(オープンヒストリカルマップ) はインターネット上の地図であり、アカウント登録は無償で、エディタ・ソフトウェアの JOSM デストップ版もしくは iD ウェブ版アプリをつかって、誰でも地図作成に貢献できる。その内容は著作権が切れた地図を援用してトレース要素を取り込んだり地名にタグ(georeference)を埋め込んだりする[16]。個人作業でデータを投稿することも、地図編集大会(地図編集大会英語版(マッパソン)に参加して指針に従い活動することも選べる[17]

この地図アプリのウェブサイトはオープンソースのプロジェクトとして、それを動かすソフトウェアはその管理作業に GitHub を採用。類似のプロジェクトには iD エディタも含まれ、大半は OpenStreetMap ソフトウェアのプロジェクトから分岐し、採用するデータモデルには時間的な要素を盛り込んだ[14]

内容

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インカ帝国の版図(1500年)。Kuntisuyu と Antisuyu およびその周辺地域を示す地図。

歴史学の特定の時代や主題を地図化するプロジェクトが立ち上がり、次のような主な貢献が実現した。

個人地図貢献者(マッパー)はソウル韓国)市内の清渓川沿いから興仁之門周辺における社会経済の変遷を地図化したり[23]アメリカではエリー運河関連、あるいはニューヨーク州ハーモニーミルズ英語版という旧工業地帯に関わる過去のインフラを地図に落とし込んだ[24]。 また他のプラットフォーム(OldInsuranceMaps.netなど)でデータ化した古地図を援用し、座標を書き込んで(georeference)、基盤となる地図の完成度を上げた[25]

このように、OpenHistoricalMap のデータモデルは OpenStreetMap に非常に近く、1層のデータに全データを統合してある[26]。ただし前者のデータは複数の時間軸を盛り込んで複雑化している[27] 。後者と比べると、地理的な特徴の始点・終点を示すタグ類は重要度が高い。実社会に存在する場所もしくは対象物で、時間の経過と共に変化したものを表現する方法は複数あり、複数のデータベースから情報を引くとしても、時間が異なると始点も終点 も変化する。

あるいはまた、個別のタグ修飾には開始日と終了日も設定できるため、アプローチを複雑にして関係性を含めるという提案も上がっている。

日付はISO 8601(別称EDTF)に従う[24]

範囲

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The OpenHistoricalMap プロジェクトは内容をまったく書き込んでいないデータセットから始まった[4]。2001年10月時点で適用範囲は「ごく限定的」と評され、建造物はほとんど地図に書き込まれていなかった[28]ところ、2024年に至り、フィンランドに限定すると意味論トリプルストア、RDFトリプルまたは単にトリプルは、データの原子実体としてリソース記述フレームワーク(RDF)データモデルに存在する[5]。トリプルは名前が示すように、意味論データに関して「主語-述語-目的語」の表現形式すなわち3つの実体でシーケンスを組み、意味論データに関する記述をコード化する(例:「ボブは35歳である」または「ボブはジョンと知り合いである」)。

OpenHistoricalMap の再現性はデータ量的に比較対象の OpenStreetMap 抽出データに匹敵したが、ポリゴン以外に多数のポイントを登録し、そのポリゴン自体、外観が非常に類似する[29]。また特定のオブジェクトは時間の経過と共に変化するため、データと実体の対応は1対1ではないものも認めている[7]

使い方

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プロジェクトのメインのウェブサイトでは地図をベクター画像の集積英語版として、歴史学の データと互換性のある2種類の方式で表示しており、一方は機能を盛り込んだ歴史形式、他方は芸術的な表現で木版画のように見える。サイドバー英語版 を使うと訪問者は地図データにフィルタをかけて、西暦紀元前4001年から現在までの間から特定の時点に絞り込み、先発グレゴリオ暦形式で表示できる[30]。特定の機能を選ぶと、ウィキペディアのタグ付きの記事題名(ページ名)もしくはウィキデータの項目識別子を手がかりにして、ウィキメディア・コモンズおよびウィキペディアからコンテンツを呼び出してサイドバーに表示、Nominatim 検索エンジンは、時代をまたいでカスタム化した例を返す[14]

OpenHistoricalMap データは他のプロジェクトで走るように提供する。REST APIに加え、まとめてダウンロードできるよう、毎週、データベース・ダンプ英語版を発行しProtocol Buffersでコード化したOSM XML フォーマットで提供する。さらにまた時代をまたいだデータの構造化クエリのため、オーバーパス API を用意してある。これらのツール類は再利用できるosmのシードパッケージとして設定し展開する[11]

OpenHistoricalMap のデータは、環境研究家がたとえば河道の地形が時間の経過と共にどのように変化したか追跡するために用いてきた[31]。OpenHistoricalMap ベースマップを応用する一例にGramps ウェブ(グランプス)英語版があり、歴史的な文脈で場所の系図データとして採用している[32]

使用許諾の期間

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OpenHistoricalMap データベース上の個別の機能には、それぞれに対応するライセンス条件を定める。同プロジェクトの総意として、新規の貢献にはパブリックドメインのライセンスCC0 を付与するとしている[33]。しかしながら、タグ付き要素の一部は他のライセンス下で提供され、一般原則としてオープンデータベースライセンス(OpenStreetMapが採用)ならびにクリエイティブ・コモンズ・ライセンス-ShareAliを当てている[34]

OpenHistoricalMap ウェブサイトを動かすソフトウェアは、 GNU 一般公開ライセンスを適用する[35]

参考文献

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脚注の典拠。主な執筆者、編者の順。

欧文資料
日本語資料

関連資料

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脚注

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  1. ^ config/locales at staging” (英語). OpenHistoricalMap/ohm-website. 2022年2月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年2月13日閲覧。 [ステージング時のconfig/locales]
  2. ^ Cawley 2021, (仮訳)OpenHistoricalMap、公認プロジェクトとしてOSM US に歓迎を受ける
  3. ^ Welty, Richard (8 October 2021). OpenHistoricalMap - ウィキ式の歴史地図. WikiConference North America 2021 (英語). p. 6. SlideShareより2022年2月13日閲覧.
    • OpenHistoricalMap - Wiki 版歴史地理学
  4. ^ a b c d Litvine et al. 2022, p. 5
  5. ^ a b R. Ferreira, Ferla & R. de Queiroz 2018, p. 293
  6. ^ Cox 2023, pp. 160–184
  7. ^ a b c Nito & Soster 2020, p. 15
  8. ^ a b Jovanović 2022, p. 234
  9. ^ Yan Minghui (2022年4月20日). “共享地圖OpenStreetMap爆改地名大戰 山友憂慮增加意外 [The shared map OpenStreetMap is overrun with changed place names, climbers worry about increase in accidents]” (Traditional Chinese). HK01. https://www.hk01.com/即時體育/761319/行山-共享地圖openstreetmap爆改地名大戰-山友憂慮增加意外 2022年4月20日閲覧。 
  10. ^ Whois search results for openhistoricalmap.org” (英語). Amazon Registrar. 2023年9月6日閲覧。
  11. ^ a b c Bhangar 2022, 登壇は16:10 GMT-7
  12. ^ Bernardoni, Silvia; Montanari, Marco; Trojanis, Raffaele (2017). “Open History Map”. Archaeologia e Calcolatori (Istituto di Scienze del Patrimonio Culturale) 28 (2): 539-548. doi:10.19282/AC.28.2.2017.44. 
  13. ^ An Open Data Map of World History” (英語). GreenInfo Network. 2022年2月13日閲覧。
  14. ^ a b c Meyer 2019, p. 4
  15. ^ Warren, Rob H. (23 May 2018). “News regarding OpenHistoricalMap”. historic (Mailing list). 2022年4月14日閲覧.
  16. ^ Vrbík, Daniel (2018). Koncept neokartografie ve studiu starých map (PDF) (PhD thesis) (チェコ語). Brno: Masaryk University. p. 55.
  17. ^ Litvine et al. 2022, p. 6
  18. ^ Home > Atlas of Historical County Boundaries Project” (英語). digital.newberry.org. 2023年3月3日閲覧。
  19. ^ Arellano (2021年7月2日). “Mapping the Tawantinsuyo in OpenHistoricalMap” (英語). Cyberjuan. 2022年4月14日閲覧。
  20. ^ Litvine et al. 2022
  21. ^ Baránek, Daniel (2022). “Transformation of the Jewish Space in Kolín, 1848-1921”. Judaica Bohemiae (Prague: Jewish Museum in Prague) 57 (1): 67. https://www.ceeol.com/search/article-detail?id=1046590. 
  22. ^ Warren (2017年4月7日). “The Geometries of Vimy Ridge, 100 years ago” (英語). The Muninn Project. 2023年2月18日閲覧。
  23. ^ Kang (2017年8月29日). “Cheonggyecheon, Dongdaemun Gentrification: Technical Notes” (英語). Seoul Libre Maps. 2023年2月18日閲覧。
  24. ^ a b Welty, Richard (1 April 2022). Life Cycle in OpenHistoricalMap. State of the Map U.S. 2022. Tucson, Arizona: OpenStreetMap U.S.
  25. ^ Cox, Adam (2023). Toward a Georeferencing Commons: A Crowdsourcing Case Study and the Creation of OldInsuranceMaps.net. 19. p. 160-184. doi:10.1080/15420353.2024.2326812. https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/15420353.2024.2326812. 
  26. ^ Mariano, Rodrigo Monteiro (11 March 2019). VGI protocol and Web service for historical data management (Master's thesis). São José dos Campos: National Institute for Space Research. pp. 23–25.
  27. ^ Topf, Jochen (15 August 2022). Evolution of the OSM Data Model (PDF) (Report). Cambridge: OpenStreetMap Foundation. p. 21.
  28. ^ Muenster et al. 2021, pp. 13–22
  29. ^ Bast (2024年6月9日). “Efficient Spatial Joins for Large Sets of Geometric Objects” (PDF). University of Freiburg Chair for Algorithms and Data Structures. 2024年9月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年8月24日閲覧。
  30. ^ Rademacher (2020年6月17日). “Set new min date on timeslider” (英語). OpenHistoricalMap/issues. 2022年2月13日閲覧。
  31. ^ Travis et al. 2022, p. 594
  32. ^ Straub (2024年8月3日). “The new OpenHistoricalMap integration in Gramps Web” (英語). Grampshub. 2024年8月24日閲覧。
  33. ^ Open Historical Map/OHM Basics” (英語). OpenStreetMap Wiki (2021年9月3日). 2021年9月3日閲覧。
  34. ^ license” (英語). OpenHistoricalMap Taginfo. 2022年7月25日閲覧。
  35. ^ LICENSE at staging” (英語). OpenHistoricalMap/ohm-website. 2022年2月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年2月13日閲覧。
  36. ^ 『第20期ナショナル・トラスト活動助成』 2024, 国立国会図書館書誌ID:000000021217

関連項目

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外部リンク

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